平山郁夫は昭和34(1959)年の東京藝術大学の副手として勤務していたときに、学生を引率して奥入瀬や八甲田山などを巡りました。当時は被爆による後遺症で体調も思わしくなく、また創作上の不振なども重なった時期でもありました。旅路の途中で体調が悪化し息も絶え絶えであった平山の目の前に現れたのは新緑の奥入瀬渓流でした。命の息吹を感じさせる力強い奥入瀬の流れは、平山に生きる喜びを心から教えてくれたといいます。それから35年、この思いを作品に残すことを強く決意し制作した《流水間断無(奥入瀬渓流)》を中心にご覧頂きます。
主催
公益財団法人平山郁夫美術館
後援
広島県、広島県教育委員会、公益財団法人ひろしま文化振興財団、尾道市、尾道市教育委員会
会場
平山郁夫美術館(広島県尾道市瀬戸田町沢200-2)
入館料金
一般920円、高大学生410円、小中学生210円
開館時間
午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
展示構成
- 第1展示室:平山郁夫の歩み
- 第2展示室: 瞬間の美・生命の美
- 第3展示室:シルクロード
主な展示作品
【流水無間断(奥入瀬渓流)】
平成6年 裏千家花鳥風月展 平山郁夫シルクロード美術館蔵
十和田湖から流れる奥入瀬渓流には、写生に何回も訪れている。 大地を削って流れる川は、多様な表情を持っている。苔むした岩 間を流れる水は、瞬時も留まらず、同じ形を作っては崩れ、崩れては作りと繰り返している。流水は時の流れのように、悠久に流れている。
【アンコールワット遺跡 朝陽】
平成4年 第77回院展
アンコールワット本殿を、少し角度を変えて見るのも新しい発見がある。
北側に回ると、樹木の間から、塔を中心とした構造物が複雑に見え、一段と奥行を感じさせる。
【群畜穹閭】
昭和48年 第58回院展
シリアのアレッポのバザールは国際的に名高い。ここの家畜市場を訪れた。人や動物の体臭、騒音と熱気。加わるにアラブ特有の羊料理の臭気。羊、山羊、牛など時に一万頭以上が集まるという大市場の雰囲気を再現しようとした作品である。
【文明の十字路を往く アナトリア高原カッパドキア】
平成21年
標高 1,000メートルを超えるアナトリア高原の中心部に広がるカッパドキア。柔らかい地層と硬い地層が重なりあい、侵食されて生みだされた奇岩が延々と広がる一大奇観の地である。3世紀、ローマ帝国の弾圧を逃れたキリスト教の修道士たちが柔らかい岩をくり抜いて隠れ住んで以来、キリスト教徒は次々と地下都市や僧院をつくっていった。文明の十字路であるカッパドキアの巨岩を背景にラクダのキャラバンが通りすぎる。