3/14(木)から15日(金)は展示替え作業の為、第2展示室がご覧いただけません。
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1959年に東京藝術大学の助手であった若かりしころ、平山郁夫は学生を引率した東北写生旅行で、奥入瀬や八甲田山などを巡りました。当時は被爆による後遺症で体調も思わしくなく、また創作上の不振などが重なった時期でもありました。そのような状況の中で見た奥入瀬渓流は、平山に「生きる喜びを心から教えてくれた」といいます。その体験をもとに、仏法を求めて砂漠を往復し、苦しみを経験し乗り越えた三蔵法師の姿を表現する《仏教伝来》を描き上げ、初めて美術界で評価されたことで、それまでの迷いから抜け出ることができました。画家として生きる道を見出した彼はその後、導いてくれた玄奘三蔵の歩いた道を自ら体験することを決心しました。仏教伝来の道を歩くことによって、平山郁夫は文化の源流をたどっていきました。
本展覧会では、文化の源流をたどる旅での発見をモチーフにした平山作品を紹介します。
併せて第二展示室では「スーパークローン文化財敦煌莫高窟第57窟」を展示中です。
- 会 期:2023年11月27日(月)~2024年3月13日(水)会期中無休
- 入館料:一般1000円、大高学生500円、中小学生300円
(10名以上団体料金:一般900円、大高学生400円、中小学生200円) - 展示構成:
第1展示室…平山郁夫の歩み
第2展示室…敦煌莫高窟第57窟 クローン文化財 東京藝術大学ほか
第3展示室…文化の源流に関する平山郁夫作品
- 後 援:
広島県、広島県教育委員会、公益財団法人ひろしま文化振興財団、尾道市、尾道市教育委員会、中国新聞備後本社
主な展示作品
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2005年 平山郁夫シルクロード美術館蔵
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2001年 第86回院展(紙本彩色・四曲一隻171×366)
絲綢の路(シルクロード)は、言葉の持つ美しい響きとは異なり、厳しい道である。私は前年、懸案だった薬師寺玄奘三蔵院の壁画を完成している。荒涼とした岩山を行く隊商に、薬師寺以後、さらに大きな目標を定め、歩もうとする自分の決意を重ねあわせて描いた。
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1998年
昭和24年、1949年に学校の授業の一環で奈良を訪ねた。生まれて初めてのことで、奈良の地を踏んだ瞬間、私はそこに古代の美がしっかりと生き続けていることを感じとった。法隆寺や薬師寺が目の前にあることが奇跡であるようにも思った。私の目指す日本画は、この古代の美に通じるものであり、朝鮮・中国を通じて遠く西方の文明とも深く結びついている。そのことに私は強い励ましを受けるのを感じた。
奈良こそ、画家への道の出発点だったのだ。
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1994年 裏千家花鳥風月展 平山郁夫シルクロード美術館蔵
十和田湖から流れる奥入瀬渓流には、写生に何回も訪れている。 大地を削って流れる川は、多様な表情を持っている。苔むした岩 間を流れる水は、瞬時も留まらず、同じ形を作っては崩れ、崩れては作りと繰り返している。流水は時の流れのように、悠久に流れている。
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1974年 第29回春の院展
アフガニスタンにはこれまで数回旅行している。内戦状態で旅行が難しいときもあったが、昔は高原に位置する砂漠の国として、人があまり訪れることのない秘境であった。中央アジアに位置するアフガニスタンは、仏教伝来の中継地として、仏教がたいへん栄えた国であった。その仏教文化の遺跡が、バーミアンをはじめ各地に点在している。ガズニーという古い町の廟を訪れた時、その周りで子供たちが無心に遊んでいた。この少女は、その中の一人を写生したものである。
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1973年 第58回院展(紙本彩色・六曲一隻 171×362)
シリアのアレッポのバザールは国際的に名高い。ここの家畜市場を訪れた。人や動物の体臭、騒音と熱気。加わるにアラブ特有の羊料理の臭気。羊、山羊、牛など時に一万頭以上が集まるという大市場の雰囲気を再現しようとした作品である。
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1983年 天竺への道展
パキスタンにはまた、峨々とした岩山の斜面や、平垣な山上を利用した山 岳寺院址がある。「ガンダーラの遺跡」の寺院は、ガンダーラ時代の名高い 本山の一つである。斜面を登ると、遺跡寺院から山の風の音が読経のよう に響いてくる。 いまや砂漠の道やオアシスは、主役の舞台を終えて砂の自然に戻りつつある。それが遺跡である。